東京都産業労働局 令和5年度中⼩企業サイバー
セキュリティ対策継続支援事業

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企業経営で重要となるIT投資と投資としてのサイバーセキュリティ対策 4-1.これからの企業経営で必要な観点:社会の動向

章の目的

第4章では、これからの企業経営で必要な観点となる社会の動向、「守りのIT投資」や「攻めのIT投資」などのIT投資について学ぶことを目的とします。また、経営投資としてのサイバーセキュリティ対策の重要性を明確にすることを目的とします。

主な達成目標

  • 社会の動向を把握し、現実社会とサイバー空間の繋がりを理解すること
  • IT投資としての「守りのIT投資」と「攻めのIT投資」を理解すること
  • 経営投資としてのサイバーセキュリティ対策の重要性を理解すること

4-1-1. 現実社会とサイバー空間の繋がり

日々の生活や企業活動において、ITの活用は広範囲にわたって浸透しています。インターネット利用率(個人)は1997年には9.2%でしたが、2022年には84.9%まで上昇しました。急速なITの普及により、現実社会とサイバー空間が密接に結びつき、私たちの生活やビジネスに大きな変革をもたらしています。

図17. インターネット利用率(個人)の推移
(出典) 総務省「通信利用動向調査」を基に作成

ITの普及により、サービスの利用者はより価値のあるサービスを選択することが可能になりました。例えば、インターネットを介して情報を瞬時に入手したり、オンラインショッピングで広範囲の商品を比較したりすることができます。このように、より便利で効率的な方法でサービスを利用できるようになりました。
さらに、スマートフォンなどの普及により、利用者の意見や情報が即座に国境を超えて広がることが可能になりました。SNSやオンラインコミュニティを通じて、個人が持つ意見や情報が一瞬で共有され、世界的な話題になることも少なくありません。これにより、社会の意識形成や情報伝達において、ITの役割がより大きくなっています。
一方で、ITサービスの提供者は、新たなサービスの提供が日々求められます。技術の進化が速く、競争が激化しているため、常に最新のサービスを提供し続ける必要があります。それに伴い、企業の経営戦略やビジネスモデルも変化しており、革新的なアイディアと素早い行動が求められる時代と言えます。
また、今後の社会では、さらなる経済発展と社会的課題の解決をするため、サイバー空間とフィジカル空間を融合させたシステムによる新たな社会の姿(Society5.0)が提唱されています。

利用者
  • オンラインショップ・ネット予約
  • リモートワーク・オンライン会議
  • ネット送金・オンライン決済
  • SNSによる情報交換
  • サブスクリプション

ユーザー価値観の変化、行動変容の加速

サービス提供者
  • ネット販売システム構築
  • 自社Webサイトのリニューアル化
  • 決済業者とのシステム連携
  • 新マーケティング戦略の実装化
  • 物流システムの再構築

ビジネスモデル変革への対応

Society5.0で実現する社会では、企業を中心に付加価値を生み出すための一連の活動であるサプライチェーンも変化します。サプライチェーンは、製造、物流、在庫管理、販売などの過程を通じて製品やサービスが供給される経路全体を指します。これまでは、主にサービスが供給される物理的な流れであるフィジカル空間が中心とされていましたが、今後の社会では、サイバー空間との繋がりが重要視されています。

サプライチェーンで利用される技術として、IoTデバイスやAIが挙げられます。IoTデバイスやAIが導入されることにより、製造や物流などのプロセスにおいてセンサーやネットワークが活用され、物理的な動作をサイバー空間で制御・監視できるようになります。さらに、クラウドコンピューティングの普及により、サプライチェーンにおける情報共有やデータのやり取りが容易になり、他社との連携が可能になります。これにより、サプライチェーン全体が可視化され、フィジカル空間とサイバー空間が融合し、サプライチェーンを構成する企業同士の関係は、フィジカル空間だけでなく、サイバー空間においても密接になります。

今後の社会では、サプライチェーンにおけるフィジカル空間とサイバー空間との繋がりが重要視されています。そして、Society5.0に合ったサプライチェーンに変化することで、従来のサプライチェーンもより柔軟で効率的なものになります。

図18. サイバー空間とフィジカル空間の関係図
(出典) 経済産業省「サイバー・フィジカル・セキュリティ対策フレームワークVer.1.0」を基に作成