4-2-1. 守りのIT投資、攻めのIT投資の概要
企業のIT投資は、「攻め」と「守り」の2種類に分けて論じられることがあります。
「攻めのIT投資」とは、ITを活用して既存のビジネスの変革、新たな事業展開や新しいビジネスモデルの創出を行うことによって、新規顧客獲得、収益拡大、販売力のアップを目指すことです。一方、「守りのIT 投資」とは、ITによる業務の効率化やコスト削減を目的としています。IT投資に攻めと守りがあることを意識して、両者のバランスをとることが理想です。日本の企業は「守りのIT投資」に偏っていると言われているので、従来より「攻めのIT投資」に重点を置くとよいでしょう。
ここでは、「守りのIT投資」(デジタルオプティマイゼーション)と、「攻めのIT投資」(デジタルトランスフォーメーション)について紹介します。次に、近年特に重要性が増している攻めのIT投資に関して、具体的な実施手順を事例とともに説明します。最後に、近年注目されている主要なデジタル技術に対する取組み方や活用方法を含めて紹介します。
「守りのIT投資」(デジタルオプティマイゼーション)
目的:生産性向上
- 業務の効率化
- コストの削減
「攻めのIT投資」(デジタルトランスフォーメーション)
目的:ビジネス継続・競争力強化
- 新たなビジネスの展開
- 顧客視点で新たな価値の創造
攻めのIT活用指針
経済産業省は、「攻めのIT活用指針」を策定しています。この指針を活用することで、自社の現在のIT活用状況を確認することができます。現状を把握し、これからどのようなIT投資を行っていくかを検討する際の参考になります。
STEP1 IT導入前の状況
ITを導入していない
(例)口頭連絡、電話、帳簿での業務
STEP2 置き換えステージ
紙や口頭でのやり取りをITに置き換え
(例)社内メール、会計処理や給与計算にITを使用
STEP3 効率化ステージ/ 守りのIT投資(デジタルオプティマイゼーション)
ITを活用して社内業務を効率化
(例)顧客・商品・サービス別の売上分析
STEP4 競争力強化ステージ/ 攻めのIT投資(デジタルトランスフォーメーション)
ITを自社の売上向上などの競争力強化に積極的に活用
(例)マーケティング・販路拡大・新商品開発・ビジネスモデル構築
図21. 攻めのIT活用指針の概要
(出典)経済産業省「攻めのIT活用指針」を基に作成