東京都産業労働局 令和5年度中⼩企業サイバー
セキュリティ対策継続支援事業

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コラム・編集後記

ISMS[ISO/IEC 27001]認証の取得にあたって

ISMSの国際規格であるISO/IEC 27001の認証を取得している企業の数は、この20年間ほどで著しく増加しています。2002年には、約140社だった取得企業数は、2015年には約4,600社、そして2023年8月現在では約7,400社となっております。この推移から、情報セキュリティの重要度が高まっており、各企業がセキュリティ対策に乗り出していることが窺えます。
そのようなISO/IEC 27001ですが、取得することでどのようなメリットがあり、考慮すべきポイントがあるのでしょうか。

メリットについては、テキスト内でも説明しているように、顧客や取引先といった利害関係者へ信頼を与えられることとなります。一定の水準以上を満たした管理体制を証明できるため、公共案件の入札や、取引先からの取引要件を満たすことにつながり、商談機会の拡大が期待できます。
また、リスクマネジメント体制の確立により、事故防止に役立ちます。ISO/IEC 27001を満たすように社内のルールを守ることや、事業変化に応じたリスクアセスメント、継続的な改善の実施により、事故の防止活動がされている状態となります。また、個人情報保護法といった情報保護関係の法令順守にもつながります。

一方で、費用面では、コンサル費用、申請費用、審査費用などがかかるため、必要な予算を確保して準備を進める必要があります。状況によっては、予算確保が容易ではない場合があるかもしれません。また、取得までの作業や、取得後の定期的な運用の手間を考慮する必要があります。

ただし、一度ISO/IEC 27001に準拠する体制を確立すれば、法令への準拠や安全管理策は仕組み化されます。また、事故防止による経済的損失の抑止効果があることや、顧客や取引先などのステークホルダーの信頼を獲得できることなど、将来の事業活動や成長に必要な費用だということを考えれば、ISMS認証取得に必要な経費は、中長期的に回収可能な投資だと考えることができます。

編集後記

セミナー4日目では、セキュリティ対策に関連するフレームワークの特徴や概要、そして各フレームワークの要素や要件について解説しました。セキュリティ対策は、やみくもに進めることで、複雑になり、余計に手間がかかり、内容に抜け漏れが発生する可能性があります。漏れなく効果的に対策を実施するために、企業はセキュリティフレームワークを使用し、自社の課題・目的に即した対応方針を選択する必要があることを、今回のセミナーを通じて理解していただければと思います。

本テキストでは、最初にセキュリティフレームワークの全体像について説明を行い、網羅的なセキュリティフレームワークであるISMSを取り上げました。その後に、各フレームワーク(CSF、NIST SP 800、CPSF、サイバーセキュリティ経営ガイドライン)の概要について説明を行いました。ISMSの管理策であるISO/IEC 27002の「サイバーセキュリティ概念(識別、防御、検知、対応、復旧)」がCSFの「コア」と共通していることを説明し、ISMSが他のフレームワークについても共通した概念を持ったフレームワークであることについても触れました。セキュリティ対策を推進する上では、網羅性を持ったISMSのフレームワークをベースとしつつ、自社に合った管理策などを他のフレームワークから選定して対策に取組むことが重要となります。次回は、フレームワークに基づいて、サイバーセキュリティ対策の詳細について解説していきます。