東京都産業労働局 令和5年度中⼩企業サイバー
セキュリティ対策継続支援事業

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4-1-2. IT活用における課題

我が国のデジタル化について、デジタルインフラ整備などの一部については世界的に見ても進んでいるものの、全体としては大幅に後れていると言えます。様々な理由が複雑に絡み合い、我が国のデジタル化の後れが生じていると考えられます。[9]
ここでは日本社会がデジタル化で後れを取った理由についてみていきます。

我が国がデジタル化で後れを取った6つの理由
1. ICT投資の低迷

我が国におけるICT投資は、1997年をピークに減少傾向にあります。また、我が国におけるICT投資の8割が現行ビジネスの維持・運営に当てられているなど、従来型のシステム(レガシーシステム)が多く残っており、その頃の考え方やアーキテクチャから抜け出せていないと言われています。これらを背景として、我が国では、オープン化やクラウド化への対応、業務やデータの標準化が遅れ、業務効率化やデータ活用が進んでいない状況にあると考えられます。

2. 業務改革などを伴わないICT投資

ICT投資が効果を発揮するためには、業務改革や企業組織の改編などを併せて行うことが重要とされていますが、外部委託に全面的に依存することで、業務改革などをしない形でのICT導入となり、十分な効果が発揮できなかったため、デジタル化に向けた更なるICT投資が積極的に行われなかった可能性があります。

3. ICT人材の不足・偏在

我が国のICT人材は、量も質も十分ではないとユーザー企業に認識されています。また、その人材についても、外部ベンダーへの依存度が高く、ICT企業以外のユーザー企業に多く配置されており、ユーザー企業では、組織内でICT人材の育成・確保ができていません。

4. 過去の成功体験

我が国は、高度経済成長期を経て、世界有数の経済大国となりましたが、ICT関連製造業についても生産・輸出が1985年頃まで増加傾向にあり、「電子立国」とも称されていました。2000年代に入ってからは、ICT関連製造業の生産額が減少傾向に転じ、2000年代後半には輸出額も減少傾向にありますが、それ以前の成功体験により、抜本的な変革を行うよりも、個別最適による業務改善が中心となり、デジタル社会の到来に対応できていないと言われています。

5. デジタル化への不安感・抵抗感

デジタル化が進んでいない理由として最も多く挙げられたのが「情報セキュリティやプライバシー漏えいへの不安があるから」(52.2%)でした。また、パーソナルデータの企業などによる不適切な利用、インターネット上に流布する偽情報への対応、慣れないデジタル操作などへの習熟など、様々な要因により、デジタル化に対する不安感・抵抗感が生じる場合があると考えられます。

6. デジタルリテラシーが十分ではない

デジタル化が進んでいない理由として2番目に多く挙げられたのが「利用する人のリテラシーが不足しているから」(44.2%)でした。このようにデジタルリテラシーが十分ではないと考えられることから、デジタル化推進に対して消極的になる場合があると考えられます。

(出典) 総務省「情報通信白書令和3年版」を基に作成

現在、日本においてDXの取組状況がどのような状態かを確認するため、DXに取組む企業が多いとされる米国と比較します。

1. DXの取組状況

日本でDXに取組んでいる企業の割合は2021年度調査の55.8%から2022年度調査では69.3%に増加、2022年度調査の米国の77.9%に近づいており、この1年でDXに取組む企業の割合は増加しています。ただし、全社戦略に基づいて取組んでいる割合は米国が68.1%に対して日本が54.2%となっており、全社横断での組織的な取組として、さらに進めていく必要があります。

図19. DXの取組状況
(出典)IPA「DX白書2023」を基に作成

2. DXの取組の成果

DXの取組において、日本で「成果が出ている」の企業の割合は2021年度調査の49.5%から2022年度調査は58.0%に増加しました。一方、米国は89.0%が「成果が出ている」となっており、日本でDXへ取組む企業の割合は増加しているものの、成果の創出において日米差は依然として大きいです。

図20. DXの取組の成果
(出典)IPA「DX白書2023」を基に作成

[9]:総務省.”情報通信白書令和3年版”. https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/pdf/01honpen.pdf, (2023-07-25).