5-1-1. 経済財政運営と改革の基本方針2023
国の方針の一つである「経済財政運営と改革の基本方針」は、政府の経済財政政策に関する基本的な方針を示すとともに、経済、財政、行政、社会などの分野における改革の重要性とその方向性を示すものです。この方針は通称「骨太の方針」と言われています。
各省庁の利害を超えて官邸主導で改革を進めるため、内閣総理大臣が議長を務める経済財政諮問会議において毎年策定します。
IT及びセキュリティ関連の施策についてもこの基本方針に沿った形で実施計画が策定されています。2023年の骨太の方針では、本文中だけで50回以上「デジタル」という言葉が使われており、デジタル技術の活用やデジタル社会の構築に向けた変革が重要な課題になっていることがわかります。
ここでは、2023年に策定された基本方針の中から、「新しい資本主義の加速」を構成する「投資の拡大と経済社会改革の実行」に掲げられているいくつかの施策において、特にIT戦略に関係する内容について説明します。
投資の拡大と経済社会改革の実行(2023年度方針)
- 1.官民連携による国内投資拡大とサプライチェーンの強靭化
- 2.GX、DXなどの加速
- 3.スタートアップの推進と新たな産業構造への転換、インパクト投資の促進
- 4.官民連携を通じた科学技術・イノベーションの推進
- 5.インバウンド戦略の展開
IT戦略に関係する施策例
サプライチェーンの強靭化
国際環境の不確実性が増す中にあって、海外からヒト、モノ、カネ、アイデアを積極的に呼び込むことで、国内全体の投資を拡大させ、イノベーション力を高めることを目指します。特に、次世代半導体を含めたグローバルサプライチェーンの中核となることを目指し、政府を挙げて投資拡大に取組んでいきます。 ITは、サプライチェーンを支える重要な役割になると同時に、セキュリティリスクへの対策も併せて重要です。
DXの加速
新型コロナウイルス感染症が拡大したことによって、日本国内において様々な課題が浮き彫りとなりました。デジタル化やオンライン化の遅れもその一つであり、2020年度の「経済財政運営と改革の基本方針」以降、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が謳われるようになりました。2023年度の方針においても同様に、DXの加速が謳われています。
DXへの対応については、デジタルの力を活用して国が地方を支える事を目指しての行政サービスの見直しや、マイナンバーカードの制度における安全・信頼確保および利便性・機能向上への取組などが掲げられています。また、中堅・中小企業の活力を向上させるため、DX、人手不足などの事業環境変化への対応を後押しすることが明記されています。
また、「サイバーセキュリティ戦略」に基づく取組を進める旨が記載されており、日本のDX方針にサイバーセキュリティの観点が組み込まれている事が確認できます。中堅・中小企業に対して、インボイス制度の円滑な導入、サイバーセキュリティ対策を支援することが謳われています。サイバーセキュリティ戦略の詳細については後述します。
(出典)内閣府「経済財政運営と改革の基本方針 2023」を基に作成