東京都産業労働局 令和5年度中⼩企業サイバー
セキュリティ対策継続支援事業

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第5章. デジタル社会の方向性と実現に向けた国の方針

5-2. 政府機関が目指す社会の方向性とサイバーセキュリティ課題

5-2-1. デジタル社会の実現に向けた重点計画

政府は経済財政運営と改革の基本方針で掲げているデジタル社会の実現を目指すにあたって、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を閣議決定しています。
日本が目指すデジタル社会について、「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会」と定義し、以下の6つの姿を挙げています。[12]

デジタル社会で目指す6つの姿
1.デジタル化による成長戦略

国・地方公共団体や民間との連携の在り方を含めたアーキテクチャの設計やクラウドサービスの徹底活用、デジタル原則を含む規制改革の徹底、調達改革の推進、データ戦略の推進、データ連携やDXの推進、AIの適切かつ効果的な活用などにより、我が国全体のデジタル競争力が底上げされ、成長していく持続可能な社会を目指す。

2.医療・教育・防災・こどもなどの準公共分野のデジタル化

必要なデータの連携などを通じて、国民一人ひとりのニーズやライフスタイルに合ったサービスが提供される豊かな社会、継続的に力強く成長する社会を目指す。

3.デジタル化による地域の活性化

地方の共通基盤を国が支援することなどにより、地域からデジタル改革、デジタル実装を推進、デジタル田園都市国家構想の実現、地域で魅力ある多様な就業機会の創出などを図り、地域の課題が解決され、各地域で培われてきた地域の魅力が向上する社会を目指す。

4.誰一人取り残されないデジタル社会

地理的な制約、年齢、性別、障害や疾病の有無、国籍、経済的な状況などにかかわらず、誰もが(デジタルに不慣れな方にも・デジタルを利用する方にも)日常的にデジタル化の恩恵を享受でき、様々な課題を解決し、豊かさを真に実感できる「誰一人取り残されない」デジタル社会を目指す。

5.デジタル人材の育成・確保

全国民が当事者であるとの認識に立ち、ライフステージに応じた必要なICTスキルを継続的に学ぶことで、デジタル人材の底上げと専門性の向上を図り、デジタル人材が育成・確保される社会を目指す。

6.DFFT(Data Free Flow with Trust):「信頼性のある自由なデータ流通」の推進を始めとする国際戦略

国際連携を図ることで、データがもたらす価値を最大限引き出し、国境を越えた自由なデータ流通が可能な社会を目指す。

(出典) デジタル庁「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を基に作成

デジタル社会の実現に向けた戦略・施策

日本がデジタル社会を実現していくための政府の取組について、7つの戦略的な政策が掲げられています。7つの戦略的な政策の中では、サイバーセキュリティに関する取組も盛り込まれています。サイバーセキュリティの施策が重要視されていることを理解するため、該当の項目について説明していきます。

目指す姿を実現する上で有効な戦略的取組(基本戦略)
  • 1.デジタル社会の実現に向けた構造改革
  • 2.デジタル田園都市国家構想の実現
  • 3.国際戦略の推進
  • 4.サイバーセキュリティなどの安全・安心の確保
  • 5.急速なAIの進歩・普及を踏まえた対応
  • 6.包括的データ戦略の推進と今後の取組
  • 7.Web3.0の推進
サイバーセキュリティなどの安全・安心の確保

国家安全保障上の課題へと発展していく可能性のある国際情勢の変化、感染症の蔓延、自然災害などへの対応として、国民の生命・財産を守り、国民生活を維持することのできる安全・安心なデジタル社会の構築に取組ます。

1.サイバーセキュリティの確保
  • 2023年度(令和5年度)に、政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用拡大などを見据え、政府統一基準を改定。
  • デジタル庁はNISCと連携し、デジタル庁整備・運用システムなどの情報システム整備方針の実装を推進。
  • 安全保障などの機微な情報などに係る政府情報システムの取扱いを参照した利用促進。
2.個人情報などの適正な取扱いの確保

改正後の個人情報保護法を踏まえ、個人情報などの適正な取扱いの確保、個人情報保護委員会の体制強化。

3.情報通信技術を用いた犯罪の防止
  • 不正アクセスの防止などに向けた官民連携。
  • 国際連携、サイバー事案の警察への通報促進などの取組を実施。
4.高度情報通信ネットワークの災害対策

ネットワークの冗長性の確保・電気通信事故の検証、災害発生時における移動電源車などの派遣などを推進。

(出典) デジタル庁「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を基に作成

各分野における基本的な施策

デジタル社会の実現に向け、6つの分野に分けて、基本的な施策が掲げられています。6つの分野における産業のデジタル化には、中小企業を対象とした施策が盛り込まれているため、その分野に焦点を当てて説明していきます。

各分野における基本的な施策
  • 1.国民に対する行政サービスのデジタル化
  • 2.安全・安心で便利な暮らしのデジタル化
  • 3.アクセシビリティの確保
  • 4.産業のデジタル化
  • 5.デジタル社会を支えるシステム・技術
  • 6.デジタル社会のライフスタイル・人材
産業のデジタル化

行政サービスのデジタル化を通じて事業者にとって利用しやすい環境を整備し、支援を必要とする事業者に迅速に支援が届く環境の実現を目指します。

1.デジタルによる新たな産業の創出・育成

クラウドサービス産業の育成 / ITスタートアップなどの育成

2.事業者向け行政サービスの質の向上に向けた取組
  • 電子署名、電子委任状、商業登記電子証明書の普及
  • 法人共通認証基盤(GビズID)の普及
  • 事業者に対するオンライン行政サービスの充実
  • レベルに応じた認証の推進
  • eKYC(electronic Know Your Customer)などを用いた民間取引などにおける本人確認手法の普及促進
3.中小企業のデジタル化の支援
  • 中小企業の事業環境デジタル化サポート
  • 中小企業のサイバーセキュリティ対策の支援
4.産業全体のデジタルトランスフォーメーション

市場評価を通じたDXの推進、産業におけるサイバーセキュリティの強化、データの利活用や規制改革などを通じた産業のDX

(出典) デジタル庁「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を基に作成

以下では、前述の産業のデジタル化のうち、中小企業を対象とした施策が盛り込まれている「事業者向け行政サービスの質の向上に向けた取組」と「中小企業のデジタル化の支援」について説明します。

事業者向け行政サービスの質の向上に向けた取組
電子署名、電子委任状、商業登記電子証明書の普及

電子署名、電子委任状、商業登記電子証明書について、事業者による活用の機会が増加し、多様化していることから、普及を更に強力に推進する。

法人共通認証基盤(GビズID)の普及

法人が様々なサービスにログインできる認証サービスを実現する「GビズID」について、2023年度中にマイナンバーカードを利用した審査の効率化、連携行政サービスの拡充などを進める。

事業者に対するオンライン行政サービスの充実

ア:e-Gov の利用促進

安定運用を確保しつつ、クラウドサービス利用による柔軟なリソース活用に向けて、ガバメントクラウドへの移行の整備を2023年度中に行うことを目指す。

イ:J グランツの利便性向上と利用補助金の拡大

申請簡素化や事務局の審査プロセス迅速化の観点から、2024年度(令和6年度)を目途に、システムアーキテクチャ及びUIの刷新を行い、申請時の事業者・事務局双方の負担軽減を図る。

ウ:中小企業支援のDX推進

事業者の申請などデータを一元化し官民で利活用するためのデータ基盤(ミラサポコネクト)を通じて、自社の経営特性に合った多様な支援がリコメンドされる環境を実現する。
最適な支援策や支援者・民間サービスなどについて情報交換できるコミュニティサイトの構築を目指す。

レベルに応じた認証の推進

ア:民間事業者への周知・相談支援の強化

マイナンバーカードの普及などに伴い、利用のインセンティブが大きく高まる民間事業者への周知・相談支援を強化する。

イ:利用要件・利用手続などの改善

民間事業者の視点に立ち、利用要件・利用手続などの継続的な改善を実施する。

eKYCなどを用いた民間取引などにおける本人確認手法の普及促進

デジタル空間での安全・安心な民間の取引などにおいて必要となる本人確認について、公的個人認証サービス(JPKI)の利用を促進する。その上で、安全性や信頼性などに配慮しつつ、具体的な課題と方向性を整理し、簡便な手法の一つである eKYCなどを用いた本人確認手法の普及を進める。

(出典) デジタル庁「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を基に作成

中小企業のデジタル化の支援
中小企業の事業環境デジタル化サポート
  • デジタル化支援ポータルサイト「みらデジ」の設置
  • IT専門家との相談を受けられる体制の整備
  • IT導入補助金
  • 取引全体のデジタル化
  • 会計・経理全体のデジタル化
  • クラウドサービス利用やハードウェア調達の支援
  • 業務効率化やDXに向けたITツール導入の支援
中小企業のサイバーセキュリティ対策の支援
  • 「サイバーセキュリティお助け隊サービス」の普及促進
  • 相談体制の強化
  • 情報集約・共有促進機能の強化

(出典) デジタル庁「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を基に作成

[12]:デジタル庁.”デジタル社会の実現に向けた重点計画”. https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/5ecac8cc-50f1-4168-b989-2bcaabffe870/b24ac613/20230609_policies_priority_outline_05.pdf, (2023-07-28).