0-1. テキストの目的、想定読者、全体構成、テキストの利用方法など

0-1-1. テキストの目的、想定読者

 昨今の社会情勢を背景に、日本の中小企業にとってサイバーセキュリティは喫緊の課題となっています。新型コロナウイルスのパンデミックは、リモートワークやオンライン業務の急速な普及をもたらしました。これにより、多くの中小企業がインターネットを介した業務に依存するようになり、サイバー攻撃のリスクも同時に増加しました。

中小企業は、大企業と比較してセキュリティ対策のリソースが限られていることが多く、サイバー犯罪者にとっては比較的容易な標的となりがちです。フィッシング攻撃やランサムウェア攻撃は、これまでにない頻度で中小企業を狙っています。攻撃により業務停止した場合は大きな損失となるため、攻撃者の要求に応じざるを得ない状況に追い込まれることもあります。
また、サイバー攻撃の被害を受けた場合、経済的損失に加えて、企業の信頼やブランド価値にも深刻な影響を与える可能性があります。特に中小企業においては、一度の攻撃で事業継続が困難になることも考えられます。こうした状況を踏まえ、中小企業がセキュリティ対策を講じることは、ビジネスの存続と発展にとって極めて重要です。
本テキストでは、中小企業の経営者やIT担当者の方々を対象に、包括的なセキュリティ対策に役立つ情報を提供します。

0-1-2. 全体構成

 本書の構成は、まずサイバー攻撃の脅威や実際の被害事例を通じて、リスク認識を深めていただきます。次に、ITおよびセキュリティの基礎知識を解説し、セキュリティ対策の要点をまとめています。また、これからの我が国や社会全体の動向についても詳しく解説し、政府や業界団体の取組、最新の技術やトレンドに触れることで、最新の動向への対応力を向上させることを目指しています。さらに、中小企業におけるIT・セキュリティの課題に焦点を当て、人材不足やビジネス上のリスクに対する具体的な解決策を提示します。また、ISMS認証などの代表的なフレームワークの習得、組織内でのセキュリティ管理体制の構築や認証取得に向けた手順を解説します。
第4編以降ではレベル1~3の分類で、セキュリティ対策のレベル感ごとに説明していきます。レベル1では、緊急性の高い事例に対処する際の手法を解説します。レベル2では、ガイドラインなどを用いて、組織全体として最低限実施すべきセキュリティ対策を解説します。レベル3では、セキュリティのフレームワークを用いて、より多くの攻撃や攻撃手法に対して網羅的に対応するための事項を説明します。
最後に、組織としてセキュリティ対策を実施するための知識やスキルおよび、それらを持った人材の育成や確保といった、組織のセキュリティレベル向上を図るにあたって実践的な知識を提供します。

0-1-3. テキストの利用方法

 本書は、組織がサイバー攻撃から身を守るための重要なリソースとなりえます。セキュリティ対策の実装、教育、意識向上、最新情報の追跡など、さまざまな方法で利用することができます。
以下に示すナビゲーションフローを参照して、自分に特に重要な内容が記載されている箇所を確認してください。

ナビゲーションフロー
ナビゲーションフロー
中小企業向けサイバーセキュリティ対策の極意
ページトップへ戻る