9-2. 【Lv.1 クイックアプローチ】セキュリティインシデント事例を参考とした実施手順
クイックアプローチでは、自社で発生する可能性が高い、または実際に発生したときの被害が大きいと考えられるセキュリティインシデント事例を参考に、対策基準を策定します。決定した対策基準をもとに、具体的に実施する内容(実施手順)を作成します。
セキュリティインシデント事例をもとにリスクアセスメントを実施します。以下は、情報セキュリティ10大脅威2024にランクインしている「内部不正による情報漏えい」に関するセキュリティインシデント事例です。
機密情報の持ち出しをした確定的な証拠が得られなかったため、結果的には被害届を提出しませんでした。しかし、この判断をするまでに2年かかりました。その間、弁護士に情報提供するために、多くの作業が必要になりました。例えば、経営者と総務担当は、情報漏えいしたと疑われる膨大なログを確認し、どれが機密情報に該当するかチェックする作業を強いられました。トラブル発生時は、人件費に加えて、心的負担も大きくかかりました。
セキュリティインシデント事例:内部不正による情報漏えい
(出典) IPA「2021年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査 -事例集- 」をもとに作成

資産目録の例
(出典)IPA 「リスク分析シート」をもとに作成
リスク特定で算出した重要度と、被害発生可能性からリスクレベルを算出します。被害発生可能性は、セキュリティインシデント事例と同様の被害がどの程度起きやすいかを考慮して算出します。
リスクレベルの算出方法「リスクレベル」=「重要度」×「被害発生可能性」

リスクレベルをもとに、必要なリスク対応を検討します。今回は、例としてリスク低減や回避を選択します。

リスク評価の結果を参考に対策基準を策定します。今回の例では、リスク低減や回避に関する対策基準を決定しています。対策基準の例は以下の通りです。
・重要情報の管理、保護
・物理的管理の実施
・従業員向け研修の実施
情報セキュリティ関連規程を参考に、実施手順を作成します。情報セキュリティ関連規程とは、情報セキュリティに関する社内規則の見本です。情報セキュリティ関連規程から、対策基準に合った規則を選択し、赤字の箇所を自社の状況に合わせて編集することにより、実施手順を作成します。
従業員は以下を遵守する
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利用者の認証に用いるアカウントが不要になる場合、
情報資産を社外に持ち出す場合には、以下を実施する。
・社外秘の場合は所属部門長の許可を得る。
・極秘の場合は代表取締役の許可を得る。
・ノートパソコンのハードディスクに保存して持ち出す場合は、ハードディスク/フォルダー/データを暗号化する。
・スマホ、タブレットに保存して持ち出す場合は、セキュリティロックを設定する。
・USBメモリなどの小型電子媒体は、大きなタグをつける/ストラップで体やカバンに固定する/落としてもすぐにわかるように鈴をつける。
・屋外でネットワークへ接続して極秘または社外秘の情報資産を送受信する場合は、暗号化する。
・携行中は常に監視可能な距離を保つ。
対象者:
テーマ:以下は必須とする。
・情報セキュリティ関連規程の説明(入社時、就業時)
・最新の脅威に対する注意喚起(随時)
・関連法令の理解(関連法令の公布・施行時)
・個人情報の取扱いに関する留意事項
・コンプライアンス教育
詳細理解のため参考となる文献(参考文献)